中医学基礎知識③弁証論治

尿路結石 | 第二服部医院

さて、以前お話しした漢方講座を間近に控え、なかなか準備が進まなくて焦っております((+_+))やらなきゃいけないとわかっているのに、つい自分の興味のあることに引き寄せられそうになりますが、ここはぐっと辛抱!ひきつづき講座の予習がてら基礎を復習していきたいと思います。

今回は以前のお話の中でも出てきた「弁証論治」について説明したいと思います。

「弁証論治」とは

弁証論治(べんしょうろんち)とは、漢方(中医学)における診断および治療法を決める上での方法論のことです。四診」という四つの診察法で患者の状態を診て、それで得た情報と、患者の五臓六腑や気血津液などで判断します。

弁証:患者の情報から、その人の体質や病気の状態、原因などを探り当て、見立てを立てること
論治:「弁証」にもとづいて、最も適した治療法や薬を検討し、治療すること

「四診」

  • 望診(ぼうしん)

患者の状態を目で見て、顔や体型、動き、などを観察します。内臓の状態は顔色や皮膚の状態、目や舌に現れます。特に舌の色や舌苔の状態を見る「舌診(ぜっしん)」は重要な診察方法です。

  • 聞診(ぶんしん)

耳と鼻で(聴力と嗅覚)で健康状態を調べます。声の大きさや、発音、呼吸音、咳を聞き取り、口臭や体臭などのにおいをかぎとることで、身体の状態を判断します。

  • 問診(もんしん)

症状や経過を聞き、さらに、食欲や睡眠の状態、暑くないか寒くないか、味覚や排便の様子など、生活状態や自覚症状を質問します。病歴や服薬の状況、家族の健康状態、職業なども聞き取って、体質や生活環境を見極めます。

  • 切診(せっしん)

触診のことで、直接患者に触れることで健康状態を確認します。「腹診:みぞおちや脇腹、下腹部などのどこに張りや緩みがあるのかを観察すること」や「脈診:脈拍や脈が強いのか沈んでいるのかなど観察すること」があります。

「弁証」

「四診」によって集めた情報から、患者さんの体質、病状を判断して「証」を決定します。この証を決定づける方法を「弁証法」といいます。まず使われるのが「八網弁証」です。そして、「気血津液弁証」、「臓腑弁証」、「六経弁証」などの診断ツールを使ってどこに異常があるかを判断します。

「八網弁証(はちこうべんしょう)」

八網弁証とは、「表裏」「寒熱」「虚実」「陰陽」の8つの基準を用いて診断を行います。

  • 「表」と「裏」

病気の起こっている部位が浅いか深いかの診断です。「表」は体表などの浅い部分に邪気がある状態で、風とか感染性皮膚炎のような状態です。「裏」は深い部位で病気が起こっている状態で、内臓疾患や血液の病気などを言います。

  • 「寒」と「熱」

病気の性質が寒性か熱性かを見極めます。悪寒がある、暖かい飲食を好むなど冷えのある状態を「寒」、のぼせる、冷たいものを好むなど熱感を感じる場合は「熱」となります。

  • 「虚」と「実」

その人の抵抗力と病邪の勢い、栄養の過不足などを判断します。「虚」は不足を意味して、気血水などの不足がある場合に起こり、抵抗力がなく病気にかかりやすいい状態です。「実」は過剰を意味して、身体の機能が高まりすぎて過興奮状態になる、もしくは病邪と抵抗力が激しく争っている状態です。

  • 「陰」と「陽」

「表裏」「寒熱」「虚実」のついての判断を総括し、状態が「陽」「陰」どちらに傾いているか判断します。表・熱・実は「陽」、裏・寒・虚は「陰」に属します。

「気血津液弁証(きけつしんえきべんしょう)」

気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)の不足や滞りなどを分析する方法です。例えば、気が足りていない「気虚」、血の滞りがある「血瘀」、水(津液)の滞りのある「痰湿」などを判断するのが気血津弁証です。

「臓腑弁証(ぞうふべんしょう)」

病気が五臓六腑のどこに入り込んでいるのか分析する方法です。八網弁証により病気が「表」より深く「裏」まで入り込んでいると判断された場合に行われます。弁証の結果としては「脾虚」「腎虚」などのように、どこの臓腑の不調によるものかを分析します。

「六経弁証(ろっけいべんしょう)」

主に寒邪や風邪などの外からの邪気に襲われた場合に、病気が表から裏へと伝変していく過程に基づいた弁証法です。「太陽病(たいようびょう)・陽明病(ようめいびょう)・少陽病(しょうようびょう)・太陰病(たいいんびょう)・少陰病(しょういんびょう)・厥陰病(けっちんびょう)の6段階に分けられます。風邪をひいたときに役立つツールです。

弁証論治の例

更年期障害の弁証では、「腎陰虚」、「腎陽虚」、「心脾両虚」、「肝気鬱血」が多くを占めます。それに対する「論治」は「滋陰補腎」、「温腎壮陽」、「寧心安神」、「疏肝理気」などになります。難しい言葉が並びますが、例えば、「腎陰虚」の方は、腎の体を潤す作用が衰えている状態と判断するので、対策は「滋陰補腎」=腎を補い、体を潤いを増やすことになり、それに合った漢方薬を選びます。

まとめ

今回は基本的な考え方を説明しました。言葉は難しいかもしれませんが、足りないところを補う、過剰すぎるものは体の外に出す、滞ったものは巡らす、というのが中医学の基本の考えです。病気になった時はもとより、不調を感じるけれど病気ともいえない「未病(みびょう)」の状態に効果的で、ここが私が中医学の大好きな理由の一つです。皆様も、ご自身の体質を中医学の観点から見極めてみませんか~(^^)/

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