先日、帯状疱疹の患者様が薬局にいらっしゃいました。他院で抗ウイルス薬を処方されて服用したが、その後痛みが長引いているとのこと。こういった患者さんはよくいらっしゃるので、薬もだいたい想像がつきますが、この患者さんには、数種類の痛み止めとともに、越婢加朮湯が処方されていました。越婢加朮湯、最近はコロナの患者さんに麻黄湯と主によく処方されていますが、もともとは「むくみ」をとる薬。なんでだろう?と調べたら、帯状疱疹の症状を早く改善してくれるとのことで、抗ウイルス剤と併用されることがあるそうです。全然知らなんだ~(^^;ということで今回は、帯状疱疹特集。中医学から見た帯状疱疹について、お伝えしますね~
帯状疱疹
・原因
帯状疱疹の発症に関係しているのは、水ぼうそうと同じウイルスです。このウイルスに初めて感染したときは、水ぼうそうを発症しますが、水ぼうそうが治ったあと、神経節に潜伏した状態で体内に残ります。普段は免疫力によってウイルスの活動が抑えられていますが、加齢、疲労、ストレス、免疫抑制薬などの使用などで起こる免疫力の低下によって発症します。特に加齢との関与が大きく、50代から帯状疱疹の発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になるといわれています。そして、帯状疱疹にかかった人のうち数%は再発するといわれています。
・症状
はじめに皮膚に神経痛のようなピリピリとした痛みが起こります。その後、水ぶくれを伴う赤い発疹が帯状に現れ、徐々に痛みが強くなり、眠れないほど痛むこともあります。強い痛みや皮膚の症状は、体の左右のどちらかにみられることが多く、3~4週間ほど続く場合も多いです。
初期の痛みは水ぶくれや赤い発疹が治るとともに軽くなりますが、皮膚の症状が治まった後も痛みが長期間にわたって続くことがあります。50歳以上の患者さんの約2割に起こり、帯状疱疹後神経痛と言います。また、難聴や耳鳴り、顔面神経麻痺を伴う場合もあります。
帯状疱疹は、ウイルスから起こる病気ですが、うつることはありません。水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスに対する免疫を保有していない人がいる場合は、感染して水ぼうそうを発症することはあります。
・治療
帯状疱疹の治療には抗ウイルス薬が使われます。痛みが強い場合は鎮痛薬や抗うつ薬を同時に使うこともあります。
先ほど述べた、帯状疱疹後神経痛は、ウイルスが神経を傷つけることで起こるため、帯状疱疹になったら、できるだけ早く治療をはじめてウイルスを抑えることが重要です。また、帯状疱疹後神経痛の痛みは、ウイルスの増殖によって引き起こされる炎症による痛み(帯状疱疹痛)とは原因が異なるため、治療薬も変わってきます。できるだけ早く、医師に相談しましょう
中医学から見た帯状疱疹
中医学では、帯状疱疹は蛇串瘡(じゃせんそう)といいます。急性期には症状に合わせて熱邪や湿邪の除去、慢性化・長期化している場合は、五臓六腑のバランスを調えたり、気・血の流れをよくすることで、帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛を治療します。
中医学的帯状疱疹治療
- 脾虚湿熱証
皮疹の色が淡い、破れやすい、ジュクジュクとして化膿しやすい、体がだるく思い便や食欲不振がある場合です。消化吸収や代謝をつかさどり、気血(エネルギーや栄養)の源を生成する脾の機能(脾気)が弱いと、気がじゅうぶん生成されず、体内の気が不足し、免疫力が低下します。また、脾の機能が落ちると未消化物の停滞によって湿濁が発生し、蘊結(籠って詰まる状態)して熱を帯びます。脾気を高め、湿邪と熱邪をとり除く治療をします。最初に出てきた「越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)」ツムラ28,五苓散に熱を冷ます「茵蔯蒿(いんちんこう)」を加えた「茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)」ツムラ117などが使われます。
- 肝胆鬱熱証
皮疹が色鮮やか、硬く熱い、痛みが強い、部位が脇など側面に多い、口が苦い、便秘などの症状を伴います。ストレスを受けると、体の機能を調節して情緒を安定させる働きを持つ肝がダメージを受け、気血が全身に行き渡らなくなるため、免疫力が低下します。肝気が鬱滞して熱邪を生むと、炎症症状が強くなります。肝気の鬱結を和らげて肝気の流れをスムーズにし、肝火を鎮める治療を行います。「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」ツムラ76、全身症状が強い場合は「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」ツムラ15を用います。
- 気滞血瘀証
疱疹の色が暗い紅色で、疱疹が消えても局所の疼痛が持続する場合、血流の悪化により疼痛と考えられます。中医学に「不通則痛(ふつうそくつう)」という言葉があり、体内での気・血・津液の流れがスムーズでないと痛みが生じる、という意味です。帯状疱疹の回復期や慢性期に起こり、気や血の流れを促進する漢方薬で治療を行います。気滞血瘀を改善する「加味逍遙散(かみしょうようさん)」ツムラ24を使用します。痛みが強い時は、「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」ツムラ68を併用すると良いです。血瘀が強い場合、「桃紅四物湯(とうこうしもつとう)」という行気養血、逐瘀行血、活血化瘀の作用がある漢方薬も良いですが、ツムラにはないので、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」ツムラ25、「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」ツムラ67など、前回も出てきた瘀血を治療する漢方薬を、体質に合わせて使います。期待が強い時は、肝鬱気滞(かんうつきたい)証を治療する「四逆散(しぎゃくさん)」ツムラ12も使用されます。
日常生活での注意点
免疫力が低下しないよう、疲労の蓄積、暴飲暴食、栄養不足、不規則な生活、ストレス、運動不足、睡眠不足などに注意しましょう。のんびりエイジングの基本、規則正しい生活と、適度な運動を心がけ、ストレスを発散しましょう。また、やや高価ですが、ワクチンも有効です。
まとめ
帯状疱疹の患者さんは皆さん、本当にお辛そうで、投薬するたびに「私も早くワクチンを打たなきゃ💦」と思ってしまいます。それでも罹ってしまったときには、上手に現代医学、漢方薬を使って、長引くのは何とか避けたいですね^^;予防や補助の薬として漢方薬はとても有効ですが、なんといってもかからないことが一番!。皆さんも普段から免疫力を下げない生活を心がけましょうね~(^^)/