知り合いの方から、ホットフラッシュに悩んでいると相談されました。突然カーッと暑くなり汗が出て、しばらくすると治まる、いつ起こるかわからず、困っているとのこと。今日は更年期の代名詞でもある「ホットフラッシュ」について、お伝えしますね~
ホットフラッシュ
ホットフラッシュは50歳前後の女性におこりやすい更年期障害のひとつで、突然の「のぼせ」「ほてり」「発汗」があらわれます。
何の前触れもなく急に顔や身体が暑くなったり、汗をかいたりしてしまい、真冬でも上半身だけ暑くて上着を脱ぎたくなったり、のぼせによって食事ができなくなったりしまう。血圧が上がってしまうこともあります。
症状は、2~4分間持続します。ほてりや発汗は顔面から始まり頭部・胸部に広がることがおおいですが、顔面のほてりや発汗のみの場合もあります。日常生活に支障を及ぼしてしまうほどひどいのは、ホットフラッシュを自覚される方のうち1割ほどと言われています。
原因
以前のブログでも書きましたが、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌は、脳の視床下部と下垂体から卵巣に指令が出されることで行われます。更年期になると脳の視床下部と下垂体が指令を出しても、卵巣の反応が悪く、エストロゲンの分泌も十分に行われません。急激に女性ホルモンの分泌が減ること
によってさまざまな症状が起こります。
また、エストロゲンは、脳や筋肉、関節をはじめ、身体のあらゆる部位に働きます。そのため、女性ホルモンが減少すると身体中に悪影響を与えてしまiます。
自律神経には、血管運動神経を通じて、血圧や発汗などをコントロールする働きが備わっています。自律神経の中枢も、視床下部に存在するため、ホルモンバランスの乱れによって、自律神経までもが乱れ、それにより自律神経の調節がうまくいかず、血管の収縮・拡張のコントロールができなくなり、ホットフラッシュが起こります。
西洋医学的ホットフラッシュの治療法
西洋医学では、少なくなった女性ホルモン(エストロゲン)を補充するホルモン補充療法(HRT)が代表的です。薬によって減少したエストロゲンを補充します。飲み薬だけでなく、貼り薬や塗り薬もあり、ホットフラッシュの症状が軽くなったり、自律神経の乱れを改善する効果があります。
デメリットとしては、以下のような症状が出る可能性があります。
- つわりのような吐き気やむくみ、むかつきがある。
- 血栓症や脳卒中のリスクが多少上がる。
- 子宮筋腫や乳腺症が悪化する可能性がある。
- 乳房やお腹の張りがある。
また、エストロゲン単独の使用で、子宮からの出血や子宮体がんの発症率が高まることがあるため、それらのリスクを抑える黄体ホルモン(プロゲステロン)を併用したり、二つのホルモンの配合剤を用います。
中医学から見たホットフラッシュ
中医学では、ホットフラッシュのような症状を『化火(かか)』といいます。さまざまな要因によって身体に「火がついてしまった」状態のことです。
加齢や女性ホルモンとも関係のある「腎」の働きの低下や、自律神経と関係のある「肝」が乱れることでホットフラッシュが起こりやすくなります。
- 腎陰不足:加齢に伴う潤い不足
加齢とともにあらわれるホルモンバランスの乱れや精力の減退などの症状を「腎虚(じんきょ)」といいます。特に潤い不足の状態を腎陰虚といい、からだに熱がこもりやすく、ホットフラッシュやのぼせの症状が出やすくなります。
漢方薬では、以前お話をした「知柏地黄丸(ちばくじおうがん)」や「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」、やや高価ですが動物生薬の入った「亀鹿仙(きろくせん)」などを用います。
知柏地黄丸は、腎のはたらきを補う成分、体を潤す成分、体の内側にある熱を鎮める成分が含まれていて、ホットフラッシュの症状を改善します。ツムラにはないので、「六味丸(ろくみがん)」ツムラ87と「三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)」ツムラ121を合わせて服用するといいです。
- 気滞・気逆:肝気の乱れ
中医学では、加齢に伴ってあらわれるイライラや落ち込み、不安感、焦燥感などを肝気の乱れと考え、過度のストレスによって気が頭の方に上ったり、気の流れが滞る気滞が起こる事でホットフラッシュの原因になると考えます。
気の流れを整える「加味逍遥散(かみしょうようさん)」ツムラ24がよく使われます。肝の疏泄機能の失調によって生じる肝鬱から熱が発生した状態=肝鬱化熱を改善します。
上半身はのぼせるが下半身は冷えていて、不眠がある場合は「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」ツムラ12、イライラ感が強い時は「抑肝散(よくかんさん)」ツムラ54などを用いることもあります。
のぼせて眠れないようなときは、「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」ツムラ103を追加するといいです
まとめ
更年期障害の症状の中でも、ホットフラッシュは頻度の高い症状です。不足したエストロゲンを補うのも一つの手ですが、やっぱり副作用が心配^^;急激なホルモンバランスの乱れから起こる更年期症状は、漢方薬の得意分野です。不足したものは補い、不要なものは捨て、詰まったり、滞ったりしているものは巡らせて流れを整えることで、体全体のバランスを整えていきます。皆さんも、つらい更年期時代を漢方の力でいい感じに過ごしましょうね~(^^)/