漢方薬の副作用

先日、「漢方薬の飲みすぎで大腸が真っ黒になる」という記事を読みました。要は、下剤の使いすぎによる「大腸メラノーシス」のことだったのですが、私もたくさん漢方薬を飲んでいる身としては、この題名にドキドキ…(^^;せっかくですので、今日は、漢方薬の副作用についてお伝えしたいと思います。

漢方薬の副作用

漢方薬には副作用がないと思われている方も多いかもしれませんが、過剰摂取や長期連用による副作用が報告されています。

甘草による「偽アルドステロン症」

アルドステロンとは、副腎から分泌されるホルモンで、腎臓に働いて、体内にナトリウムや水をため込み、血圧を上昇させたり、カリウムの排泄を促す働きがあります。甘草に含まれている「グリチルリチン酸」は、多く摂取すると、あたかもアルドステロンが過剰になったかのように、血清カリウム値の低下血清ナトリウム値の上昇が見られます。具体的な症状としては、高血圧、むくみ、手足のだるさ、筋肉痛などがあるとされます。

グリチルリチン酸の一日量が200mgを超えてくる場合は、「偽アルドステロン症」の発症に注意する必要があると考えます。甘草1g中にはグリチルリチンが約40mg含有されますので、甘草を5g以上を含む漢方、もしくは甘草を多く含む漢方薬が同時に処方されている場合は注意が必要です。

甘草の含有量が多い漢方製剤と甘草の1日量

  • 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)6.0g
  • 甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)5.0g
  • 桔梗湯(ききょうとう)3.0g
  • 排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)3.0g
  • 人参湯(にんじんとう)3.0g
  • 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)3.0g
  • 黄連湯(おうれんとう)3.0g
  • 五淋散(ごりんさん)3.0g
  • 桂枝人参湯(けいしにんじんとう)3.0g
  • 炙甘草湯(しゃかんぞうとう)3.0g
  • 芎帰膠艾湯(きゅうきけいがいとう)3.0g
  • 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)2.5g

認知症に処方される「抑肝散」にも注意が必要です。高齢者によく使われるのですが、利尿薬と併用すると「偽アルドステロン症」を起こす場合があります。

大黄による「「大腸メラノーシス」

排便を促す作用のある「大黄」の有効成分はセンノシドという物質です。センノシド製剤としては、アローゼン、プルゼニド、ピムロなどがあり、アントラキノン系大腸刺激性下剤です。センノシドの長期連用により、腸管の細胞が死滅し、それをマクロファージ(自分の免疫細胞の一種)が食べることで色素沈着の原因物質である「リポフスチン」が作られると言われています。大腸メラノーシスはこの物質が大腸粘膜に沈着することが原因です。

大腸メラノーシスの状態になると、大腸の蠕動に関与する神経もダメージを受けており、腸管蠕動が低下して便秘の状態となる弛緩性便秘と言われる状態になります。弛緩性便秘となると、刺激性下剤に対する反応も低下するためどんなに下剤を使用しても排便が得られない状態になってしまいます。

大黄を含む主な漢方薬

  • 大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
  • 大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)
  • 三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
  • 応鐘散(おうしょうさん)
  • 大承気湯(だいじょうきとう)
  • 桃核承気湯(とうがくじょうきとう)
  • 小承気湯(しょうじょうきとう)

山梔子による「腸間膜静脈硬化症」

山梔子はクチナシの果実を原料とした生薬です。山梔子の中のゲニポシドという配糖体が腸内細菌により加水分解され、ゲニピンという刺激物質になり、右側結腸から吸収され、静脈血管壁を損傷し、肥厚や石灰化を来す機序が考えられています。このような虚血性病変が長期間続き、腸管壁の障害や硬化が起こることで、潰瘍や狭窄を生じると考えられています。腸間膜静脈硬化症は腹痛や下痢、吐き気といった症状が代表的ですが、消化物が肛門に移動できなくなり、お腹の激痛をもたらす腸閉塞の状態になる危険性もあります。山梔子を含む漢方薬を5年以上長期投与されている場合は特に注意が必要です

山梔子を含む主な漢方薬

  • 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
  • 加味帰脾湯(かみきひとう)
  • 温清飲(うんせいいん)
  • 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

この中で、特に注意すべき漢方薬が「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」です。ダイエット目的の人に人気があり、市販でもいろいろな名前で販売されています。防風通聖散には、「甘草」「大黄」「山梔子」が含まれています。長期服用には気を付けるようにしてください。

漢方薬服用時の注意点

①規定量以上の服用は、特定の生薬を多く摂取することになるので気を付けましょう

②市販薬やサプリメントとの併用も場合によっては薬の成分の過剰摂取になることがあります。たとえば、「麻黄」の主成分であるエフェドリンは、せき止め薬として一般的な市販薬にも含まれています。

③2種類以上の漢方薬を使用する場合は、必ず専門家の意見を聞くようにしてください。過剰摂取、もしくは反対の作用の漢方薬の併用で、体の不調をきたすことがあります。

まとめ

漢方専門薬局では、漢方薬の併用は日常茶飯事で、私自身もすっかりそれに慣れていましたが、やはり気を付けるべきところはしっかり押さえないといけないですね。皆様も、迷った時はぜひ専門家に相談してみてくださいね~(^^)/

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