最近、薬局で膀胱炎の患者さんに対応することが多いです。真夏のような暑さだったり、肌寒かったりと寒暖差の影響でお体の疲れもあるのかな。昨日は、普段は漢方薬で治ってしまうけど、今回は悪化してしまった、という患者さんに対応しました。歳をとってから、膀胱炎を繰り返すようになったそうです。今回は、膀胱炎について、膀胱炎に効く漢方薬を紹介しますね〜😊
膀胱炎
膀胱炎は、尿をためて排出する膀胱に炎症が起こる病気です。「急性膀胱炎」「慢性膀胱炎」「間質性膀胱炎」があり、約9割は急性膀胱炎です。
急性膀胱炎は女性に多く、膀胱に細菌が侵入することが原因で、頻尿、残尿感、膀胱の痛みなどの症状が起こります。原因となる細菌の約8割が大腸菌です。女性は肛門から尿道までの距離が短く、尿道の長さも短いため、膀胱炎を発症しやすいです。
慢性膀胱炎は、膀胱の炎症が持続している状態で、急性膀胱炎を繰り返すと、慢性膀胱炎に変化することがあります。また、前立腺肥大や尿路結石などから引き起こされる場合もあります。
間質性膀胱炎は、特に原因がないのに、尿が膀胱にたまったときに痛みを感じたり、頻尿をきたします。症状はよくなったり悪くなったりを繰り返すことが多く、生活環境やストレスなどによる影響を受けやすいといわれています。中高年の女性に多く、診断が難しく、確立した治療法もないです。
急性膀胱炎の治療と養生
急性膀胱炎の治療は、抗生剤が使われます。医師から指示があった期間きちんと飲み切ることが大切です。また、免疫力が下がったときに罹患しやすいので、消化のいいものを食べてよく休むようにしましょう。温かめの水分を少し多めに摂りましょう。
淋証(りんしょう)
排尿痛や頻尿、残尿感、排尿困難などの排尿障害の症状を、中医学では「淋証」といいます。淋証は次のように分類されます。
・熱淋…尿が濃い黄色を呈し、排尿時に灼熱感と刺痛を生じる
・血淋…尿に血が混じり、刺痛を伴う
・気淋…少腹部の脹満、排尿困難がみられる
・石淋…尿路結石症を伴う
・膏淋…尿の出が悪く混濁する
淋証の原因
- 膀胱湿熱
外部から湿熱邪気の侵入、飲食の不摂生などにより、湿熱が膀胱に停滞することによって淋証が表れます。「熱淋」や「血淋」、「石淋」、「膏淋」が湿熱による淋証です。
- 肝気鬱結
悩みや怒りなどのストレスにより、肝の疏泄失調を生じ、肝気は鬱結して熱化します。この気火が下に向かい膀胱の気化を失調させることによって、排尿困難、腹部脹痛などがみられる「気淋」を発症します。
- 腎気虚損
慢性疾患や加齢、過労や性生活の不節制などが原因で、腎虚となり、腎の固摂機能の低下により、脂液が尿中に混じり、尿が混濁する「膏淋」を生じます。腎陰が虚して、虚火が盛んになると、血熱から「血淋」が起こります。腎虚が原因の場合の場合は、回復が遅い、繰り返す、疲労感が強いなどの特徴があります。
淋証に使われる漢方薬
- 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)ツムラ
熱淋の急性期に用いられます。特に排尿痛が酷い場合におススメです。体を冷やす作用が強いので、長期服用には向きません。
- 猪苓湯(ちょれいとう)ツムラ
膀胱炎のファーストチョイス薬で、特に排尿困難がある場合におすすめです。また、止血作用があるので、血淋にも有効です。作用が穏やかで、すべての淋証の軽症、もしくは淋証の予防に使えます。
- 五淋散(ごりんさん)ツムラ
膀胱や尿道などの熱を取る働きがあり、主に熱淋に用いられます。血を養う生薬が入っていて、血淋にも使えます。作用が穏やかなので、体の弱い方や妊婦、高齢の方に使いやすいです。
- 清心蓮子飲(せいしんれんしいん)ツムラ
疲れた時や、イライラすると膀胱炎のような症状が出るという方におすすめです。尿が濁る、黄色みが強い、といった症状を改善させる効果があります。間質性膀胱炎のような精神的要因が原因の一つと考えられる場合にも、効果が期待できます。
- 牛車腎気丸(ごしゃじんぎがん)
体を温め、腎を補います。頻尿や、冷えや腰痛、疲れやすい、むくみなどの症状が出ている方におすすめです。冷えが強く、むくみがつよい時は「真武湯(しんぶとう)」もおすすめです。
膀胱炎予防のための生活養生
- 膀胱内に細菌を入れない
外陰部を清潔に保ちましょう。排便時は前から後ろに拭く、生理用ナプキンやおりものシートの交換もこまめにしましょう。
- 膀胱内で細菌を増やさない
トイレは我慢せずにこまめにいきましょう。 長時間膀胱内に尿を貯めないことが大切です。特にこれからの季節は水分を十分摂りましょう。アルコールは水分ではないですよ(^^♪
- 免疫力を落とさない
ストレスや過労、睡眠不足は、免疫力を低下させる原因になります。ストレスは適度に発散し、休息は十分取るようにしましょう。
まとめ
最初にお話しした患者さんは、市販の五淋散=「ボーコレン」を購入し服用していたそうです。ご高齢の上冷えが強く、むくみもあるので、症状が取れたら牛車腎気丸を予防に服用したらいいのかなと思いました。ご本人には、とにかく体を冷やさないよう、そしてできるだけ無理しないようお伝えしました。早く症状が取れますように☺
西洋医学なら、抗生剤オンリーの治療が、中医学では体質や原因によって様々な使い分けがあります。そこが難しいところでもあるのですが、できるだけ抗生剤を使わないように早めの対処を漢方薬でできるといいなと思います。今後も簡単な使いわけを紹介していこうと思いますので、ぜひ参考にしてくださいね~(^^)/