3年前から下痢に悩んでいる患者さんが来られました。スポーツジムで水泳するのが趣味だったが、週に何回も泥状便が出るようになりやめた。その後も下痢は良くならず、食欲も落ちて、15キロ体重が減った。病院でいろいろ検査をしたが、特に悪いところはなく、ストレスか過敏性腸炎だろうとのことで、整腸剤と下痢止めを処方された。薬を飲んでも改善せず、疲れやすく、元気がでない、とのことです。
私も長年下痢で悩んできました。食養生、生活養生を気を付けてきましたが、最近は暑さのせいで、つい冷たいものを摂ってしまったら、途端にゆるゆる状態に…(゚д゚)!今回は自分への戒めもかねて、慢性下痢について中医学的にお話しようと思います。
下痢
健康な便は、水分が60%から70%ほどです。これより水分が増えると便が柔らかくなり軟便、水分が90%を超えると下痢となります。
下痢には急性と慢性があります。急性の下痢は、食中毒などによる感染性のものと暴飲暴食などによる非感染性のものに分かれますが、どちらも2週間以内に治まります。慢性の下痢は3週間以上続くもので、機能性の下痢とそれ以外に分けられます。機能性の下痢は生活習慣やストレスが原因となって起こるもの機能性の下痢と、それ以外の、病気や薬が原因の下痢があります。
中医学から見た下痢
下痢は、中医学では泄瀉(せっしゃ)といい、「泄」は軟便より緩めの便、「瀉」はさらに緩い便のことを指します。脾胃は食べたものを消化吸収し、栄養を全身に行き渡らせる働きがあります。その働きが低下すると消化吸収ができず、未消化のまま体外に出され、泄瀉が起こります。湿は、脾胃の働きを低下させやすく、梅雨や夏の時期は外気の湿度が高いため、人体も外界から湿気の影響を受けやすくなり、もともと消化機能が弱い方や、暴飲暴食で消化機能に負荷がかかった場合は泄瀉が起こりやすいです。冷房や冷たい飲みものの飲みすぎで、身体の冷えと外気の湿気とが組み合わさって胃腸の働きが悪くなる場合も多いです。
泄瀉の原因と治療
- 感受外邪(がいじゃ)
外邪が身体に侵入して起こります。
寒と湿が結びついた「寒湿邪(かんしつじゃ)」は冬の胃腸型の風邪に該当します。軟便、お腹の張り、悪寒発熱、節々の痛みなどの症状がでます。香蘇散(こうそさん)ツムラや、ツムラにはないですが、藿香正気散(勝湿顆粒)などが用いられます。
熱と湿が結びついた「湿熱邪(しつねつじゃ)」は夏季の下痢で、しぶり腹、便の色が黄褐色で臭い、肛門に灼熱感、口の渇きなどの症状がでます。茵陳五苓散(いんちんごれいさん)ツムラや半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)ツムラが用いられます。
- 飲食失調(いんしょくしっちょう)
暴飲暴食や体に悪いものを食べることによっておこる下痢のことを言います。第一の原因は「過食」で、食べるものが多すぎると受納能力を超えてしまい下痢になります。第二の原因は「食べ物の質」で、冷たいものや脂っこいもの、生もの、甘いものは胃腸ん働きを低下させます。第三の原因としては「腐敗物」で、脾胃が障害され下痢が起こります。過食には、薬ではないのですが「晶三仙(しょうさんせん)」がおすすめです。
- 肝気鬱結(かんきうっけつ)
ストレスなどにより、肝の疏泄機能が失調して、肝気鬱結の状態が長引くと、脾を痛めて脾の運化機能が失調して下痢になります。脾と肝の両方をケアするようにします。小柴胡湯と五苓散を合わせた「柴苓湯(さいれいとう)」ツムラがよいです。
- 脾胃虚弱(ひいきょじゃく)
もともと胃腸が弱く、下痢が長引いて治りにくいタイプです。
過労や胃腸虚弱により、水分代謝がうまくいかず、停滞した水が寒湿に代わり、泄瀉が起こります。六君子湯(りっくんしとう)ツムラや参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)などが用いられます。
- 腎陽虚弱(じんようきょじゃく)
病後や加齢や虚弱体質により腎陽が虚しているタイプで、明け方に下痢をしやすく、手足や腰が冷えていることが多いです。胃腸虚弱の状態が長引くと、腎の体を温める作用が落ちて、寒湿が停滞しやすくなり、長引く下痢が起こります。真武湯(しんぶとう)ツムラ、八味地黄丸(はちみじおうがん)ツムラなどが用いられます。
食生活養生
・暴飲暴食、生ものや冷たいものを避けましょう
・消化のよいものをとりましょう
・ハトムギ茶など胃腸の働きを助けるお茶を飲みましょう
・身体を冷やさないようにしましょう
・おしゃべりや趣味を楽しんでストレスを発散しましょう
ただし、下痢は病気が原因で起こることもあるので、不調が長引く場合や下痢の症状が強い場合などは、早めに医師に相談してください。
まとめ
脾胃虚弱の私、参苓白朮散を長年飲んでいて、下痢の回数はだいぶん減ってきたように思いまが、今回のように、食養生を怠るとてきめんです…^^;まだまだ湿度の高い時期が続き、脾胃の負担が増す場面も多いですが、どうぞ皆様も、冷たいものに気を付けて、脾胃に優しい生活心がけましょうね~(^^)/