親戚シリーズ②四君子湯

1年ほど前から胃腸の調子が悪いと通院されていた患者さんから、とてもいいお話を聞きました。その方は、胃酸を抑える薬の中でも結構強めの薬を、最大量で服用されていましたが、なかなか調子がよくならず、嘔吐、胃痛を繰り返しておられました。先日、久しぶりに受診されて、体調をうかがうとずいぶん良きうなったと明るい顔をされてお話しされました。3か月ほど前から六君子湯を飲み始めたが、気が付くと胃の調子がとてもよくなっていた。1日2回飲んでいたパリエットを先月からは減らしているが、体調の波がなくなって、食欲が出てきた。そして、昔から困っていた便秘も良くなった。いまは食べ過ぎないように気をつけなきゃ、と喜んでおられました。

あるんですよね~ピタッと当てはまると、メインの症状だけでなく、他の症状まで改善されていくこと。これだから、漢方薬はおもしろい!今回はせっかくなので、六君子湯、そしてその親戚たちを大特集しちゃいます

六君子湯

以前「逆流性食道炎」でもお伝えしましたが、脾気虚=胃腸機能低下を改善する処方として代表的な薬です。「四君子湯(しくんしとう)」ツムラ75に親戚シリーズでお伝えした「陳皮、半夏」を加えて、「六君子湯(りっくんしとう)」ツムラ43となります。胃腸の機能回復(四君子湯)作用と脾胃の機能が落ちて出来た痰を除く(乾かす)作用が強くなっています。四君子湯と六君子湯の使い分けは食欲の程度。食欲が全くなく、やせ細っている人は、四君子湯のほうが合う場合が多いです。

構成生薬

・人参(ニンジン):ウコギ科のオタネニンジンの根をそのまま、または湯通しして乾燥させたもの。消化機能を高め、体力を回復させる作用があります。

・白朮(ビャクジュツ):キク科のオケラの根を乾燥させたもの。「水滞」の改善し体内の水分代謝を正常にします。

・茯苓(ブクリョウ):サルノコシカケ科のマツホドの菌核を乾燥させたもの。利尿、強心、鎮痛、鎮静作用があります。

・甘草(カンゾウ) :マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。疼痛緩和、緊張を緩める働きがあります。

・大棗(タイソウ):クロウメモドキ科のナツメの果実。胃腸の機能を整え、精神を安定させる作用があります。

・生姜(ショウキョウ):ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたもの。体を温め消化機能を整えます。
(ここまでが四君子湯)

・半夏 (ハンゲ)::サトイモ科のカラスビシャクの塊茎を乾燥させたもの。水分の停滞や代謝障害の改善作用、鎮吐があります。

・陳皮 (チンピ) :ミカン科のウンシュウミカンなどの成熟果皮を乾燥させたもの。気をめぐらし、胃もたれ、嘔吐、食欲不振を改善します。

六君子湯の注意点

先ほども書きましたが、乾かす作用の強い生薬がおおいので、口喝に注意が必要です。

親戚シリーズ:四君子湯

四君子湯は胃腸の調子を整える漢方薬の基本骨格で、四君子湯をベースにした漢方薬がいろいろあります。「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」ツムラ41、「啓脾湯(けいひとう)」ツムラ128、「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」ツムラ48、「帰脾湯(きひとう)」ツムラ65などが、代表的な四君子湯の派生処方です。

  • 補中益気湯:「四君子湯」-「茯苓・」+「黄耆・当帰・柴胡・升麻」

補気作用の強い「黄耆」が主役で、補血作用のある当帰が入っっているので、より疲れが強い時に良いです。上にあげる作用がある生薬が追加になっているので、内臓下垂がある場合にも適しています。

  • 啓脾湯:「四君子湯」-「生姜・大棗」+「山薬・蓮子肉・山査子・沢瀉」

山薬や蓮子肉は慢性の下痢に効果のある生薬で、お子様の下痢にも用いられる穏やかな処方です。山査子には食べ過ぎによる消化不良に効果があります。

  • 十全大補湯:「四君子湯」+「黄耆」+「四物湯」+「肉桂」

「四物湯(しもつとう)」ツムラ71は、当帰・熟地黄・芍薬・川芎からなる補血の基本処方です。「十全大補湯」は気虚だけでなく血虚もある方にお勧めの処方で、肉桂が入っているので、体を温める作用も強いです。顔色が白い感じの寒がりの方に合います。

  • 帰脾湯:「四君子湯」+「黄耆・当帰・竜眼肉・酸棗仁・遠志・木香」

四君子湯をベースに、「補血の生薬」「安神の生薬」「気を巡らす生薬」の入った処方です。気血両虚に体質に、寝つきが悪い、眠りが浅いなど不眠の症状があるときに良いです。

この他、夏におススメの「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」ツムラ136、めまいに使われることが多い「半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)」ツムラ37も四君子湯の派生処方と言えます。

まとめ

ご飯が美味しく食べられるって本当に大事です。元気が出てくるのはもちろん、気持ちも明るくなりますね。もちろん、食べすぎは脾胃に負担をかけるので、特にこれからの年末年始のシーズンは食事に気を付けてねとお伝えしました。今後はパリエットを少しずつやめて、六君子湯をベースに体調管理ができたらいいなと思います。
私は、帰脾湯がばっちり体に合って、漢方薬のファンになりました。体に合う漢方薬を見つけることは、すごい助っ人を発見したような心強い気持ちになります(*^-^*)体調不良に困っている方に、会う漢方薬を見つけるお手伝いをできるよう、これからも勉強を続けていきたいなとしみじみ思いました💛皆様も、もし何か体調に関してお困りごとがあれば、ぜひ漢方薬を試してみてくださいね~わからないときはいつでも質問くださいませ(^^)/

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