認知症①症状と薬について

勤務先の社長が、認知症の活動にとても積極的で、認知症カフェや認知症患者の方たちとの活動、認知症がテーマの映画への協賛、講演会など、日々忙しく活躍されています。他の患者様からの問い合わせも増え、私も勉強せざるを得ない状況となってきました。薬の働きはわかっていても、実際認知症の方とのかかわり方に関しては素人のワタクシ。市が行っている認知症サポーター養成講座や薬剤師会主催の認知症対応力向上研修など、今更ながら猛勉強開始しています(^^;

そんな時、今までとは違う認知症の薬が承認されたというニュースが飛び込んできました。せっかくですので、今回は新しい認知症薬について、そして中医学で対応できる薬について、2回に分けてお伝えしていこうと思います。

認知症とは

認知症とは、脳に起こるさまざまな不調が原因で認知機能が低下する状態を指します。もの忘れが増えるのは年相応の変化ですが、普段行っていたことができないなど、日常生活に明らかな支障が出るのが認知症の大きな特徴です。
認知症には、大きく分けて「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」「血管性認知症」があります。そのうちアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症は、「脳の変性疾患」といって、何らかの原因で脳の神経細胞が壊れていき、発症すれば基本的に進行していくという特徴があります。

新しい治療薬「レカネマブ」の作用

認知症の中で最も多いアルツハイマー病は、「アミロイドβ」というたんぱく質が何らかの原因で脳の神経細胞の外側に蓄積することがきっかけになると考えられています。
レカネマブは「抗アミロイドβ抗体」と呼ばれる薬で、抗体の働きで脳内に存在するアミロイドβに結合して減らす作用を持っています。早期アルツハイマー病の進行を抑えることが期待されています。
ただ、軽度認知障害(MCI)、もしくは軽度アルツハイマー型認知症で、さらにアミロイドPET検査や脳脊髄液検査によりアミロイドβの蓄積が認められた人が投薬の対象になります。中等度以上に進行したアルツハイマー病の人には、効果が確認されていません。
また、薬価(薬の価格)が高く、日本円に換算すると1人あたり年間約340万円となります。アルツハイマー病は患者数が多い疾患なので、保険適用の範囲などがどうなるか、今後の課題と思われます。

従来の薬の作用

日本で承認されている認知症の治療薬は、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの4種類があります。いずれも残っている神経細胞ができるだけ長く働くようにすることで、認知症の症状の進行のスピードを遅らせる作用があります。レカネマブとの大きな違いは、進行を抑えることはできないところです。

ドネペシル

「アセチルコリン」という神経伝達物質の減少を防ぐ作用がある、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤です。アルツハイマー型認知症の初期から中期にかけて、進行を遅らせることができるといわれています。認知症症状のひとつである記憶障害を緩和する効果も期待されています。

ガランタミン

ドネペジルと同様、アセチルコリンが行う神経伝達を助ける薬です。軽度および中程度のアルツハイマー型認知症に適応されます。記憶障害や見当識障害の症状を抑え、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせることができるといわれています。

リバスチグミン

アセチルコリンエステラーゼ阻害剤のひとつです。軽度および中程度のアルツハイマー型認知症に適応されます。貼り薬のため、飲み込みがうまくできない患者さんも使用できます。

メマンチン

脳内のグルタミン酸の働きを抑える効能を持つ薬です。神経細胞を興奮させる「グルタミン酸」により、脳内で神経に情報を伝えるNMDA受容体が過剰に活性化され、神経細胞や記憶に障害が現れます。物盗られ妄想や興奮など、興奮型の症状が出ている人に処方されます。中度以上のアルツハイマー型認知症の方に処方されます。

薬の使い分け

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は「意欲を高めるタイプ」、メマンチンは「精神を落ち着かせるタイプ」の薬です。
無気力や無反応、意欲減退がみられる場合は「ドネぺジル」不安や妄想があり、理性の低下、攻撃性などの情緒不安定がみられる場合は「ガランタミン」が選択されます。薬を飲み忘れてしまう方の場合は、貼り薬の「リバスチグミン 」が適しています。夜間の異常行動などの興奮症状がみられる場合は「メマンチン」が選択されます。

まとめ

認知症は、さまざまな原因疾患によって発症しますが、約6割を占めるのがアルツハイマー病によるものです。現在使用できる治療薬は、進行のスピードを遅らせることしかできないため、進行を抑える可能性がある新薬、大注目ですね。2025年には、65歳以上の人口の20%、およそ5人に1人が認知症になり、90歳以上ではおよそ2人に1人となります。決して他人ごとではありませんね(>_<)次回は認知症によく使われる漢方薬と予防のための生活習慣をお伝えしますね~(^^)/

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