今回は、以前お伝えした「認知症」について、中医学ではどのように考えるかをメインに調べてみました。認知症の漢方薬、といえば、「抑肝散(よくかんさん)」というイメージがありますが、それだけではありません。さあ、もう少し深堀していきましょう~(^^)/
中医学から見た認知症
中医学的には、認知症に対しては、一番は予防すること。そして、「認知症」の原因は、次の4つと考えます。
「瘀血(おけつ)」「腎虚(じんきょ)」「脾気虚(ひききょ)」「肝鬱(かんうつ)」
これらの不調を改善して、認知症を予防する、というのが中医学の基本的な考え方になります。
瘀血
瘀血とは、血の流れに滞りがある状態のことで、脳への血流が妨げられると、物忘れや記憶力の減退を引き起こします。加齢とともに、血は粘り流れが滞りやすくなることが多く、動脈硬化、高血圧、高脂血症などがある場合も、血の流れが良くない状態といえます。脳の機能を維持するためには、血の巡りをよくし脳に血の栄養を供給することが必要です。
漢方薬では、血を巡らせ瘀血を取り除く「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」などの活血化瘀薬を用います。
腎虚
腎虚とは、生命を維持するためのエネルギー=腎精が不足した状態で、様々な老化現象をもたします。
中医学では、脳と腎の関係も深く、認知症も腎虚による症状のひとつと考えられています。特にアルツハイマー型認知症のように、脳の萎縮が原因とされる記憶障害では、補腎をして腎精を高めることが大切になります。漢方薬では、腎のはたらきを高める「六味地黄丸(ろくみじおうがん)」や「参茸補血丸(さんじょうほけつがん)」などを体質に合わせて用います。
脾気虚
脾気虚とは、脾胃のはたらきが低下した状態です。脾胃(胃腸)は、体のエネルギーとなる気血を生み出すので、脾気虚になると、食欲や体力の低下だけでなく、脳に栄養が届きにくくなり、記憶力の低下や、健忘の症状が起こりやすくなります。脾胃の働きを助ける「六君子湯(りっくんしとう)」や「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」「帰脾湯(きひとう)」などが使われます。
肝鬱気滞
ストレスによって「肝」の機能が低下すると、肝鬱気滞の状態を引き起こし、血の巡りが悪くなります。また、老化に不安や焦燥感を強く持ち続けることが、認知症の症状を悪化させる原因となることもあります。肝鬱は認知症の主要な原因ではありませんが、気の巡りや乱れを整え精神をリラックスさせることにより、症状が改善することが期待できます。
「加味逍遥散(かみしょうようさん)」や「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」「抑肝散(よくかんさん)」など疏肝解鬱の漢方薬が使われます。
認知症と抑肝散
認知症の漢方薬として臨床でよく使われている抑肝散は、認知症の中でも、先ほどの肝鬱気滞でお伝えした通り、周辺症状である行動・心理症状(BPSD)に対して効果が期待できることが確認されています。神経細胞の興奮を抑えることで、特に、幻覚、興奮、攻撃性、易刺激性(刺激に対して過敏に反応する)といった、興奮性の周辺症状の改善が認められています。本来は子供の夜泣きやひきつけ、イライラなどの神経の高ぶりなどを抑える目的で用いられてきた安全な漢方薬で、長期使用も可能です。
認知症予防
最近の研究では、軽度認知障害(MIC)と呼ばれる認知症の一歩手前の段階で発見し、対策すれば認知症への進行を食い止め、予防できる可能性があることも分かってきています。
①良い刺激を与える
・人と会話をする
・1日1回は笑う
・趣味の時間を持つ
②頭を鍛える
・左右の手を交互に使って歯みがきをする
・両手で肩をもむ
・髪の毛を1日100回梳く(頭皮を刺激する)
・歯を1日30回嚙み合わせる(骨や腎を強める)
③飲食に気を付ける
・薄味
・ゆっくり食べる
・温かいものを食べる
・気持ちよく食べる
④自然療法
・温泉(気血の流れを良くする)
・高山(気が寒冷で人体の気の消耗が少ない)
・香花(花を見る、嗅ぐ、食べる)
まとめ
中医学の師匠からよく言われていたのは、いろんな体質があるけれども、全員に共通なのは「補腎と活血」が必要ということ。これが、スローエイジングの基本です。私の場合、脾気虚もあるので、今回お伝えした対策はすべて実行済!認知症予防にはまずまず合格点だと思います(^_-)-☆そして、毎日をイキイキと前向きに暮らすことは認知症を予防するためにも、とても大切なことですね。山に行って緑を楽しんだり、温泉でゆっくりしたり、そんな時間を持つのは大切だと改めて思いました。そうやって動けるだけの体力や筋力にも、気を付けたいと思います。老化を止めることはできませんが、自分次第で老いと上手に付き合うことはできると思います。皆様もどうぞ、認知症予防を兼ねたスローエイジング、始めてみませんか(^^)/