夏バテに効く漢方薬は?『清暑益気湯』と『補中益気湯』の違いと使い分け

のんびり日記

先日、同僚の息子さんがやや夏バテ気味とのことで、補中益気湯を飲むのはどうかと相談を受けました。
夏の暑さで体がだるい、食欲が出ない、疲れがとれない…。この時期はそんな相談が増えます。
そんなときに頼れる漢方薬が「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」そして、「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」です。どちらも「気」=エネルギーを補う処方ですが、実は得意な場面が違います。今回はこの2つの漢方薬の特徴と、どんなときに使い分ければいいのか、そしても一種類夏に必須の漢方薬をご紹介しますね~(^^)/

1. 補中益気湯とは?

生命活動のエネルギーである「気」の量が不足した「気虚(ききょ)」に対して使われる漢方薬です。「中=(体の内側)を補い気を増やす」という意味で名付けられていて、胃腸のはたらきを高め、食欲を出すことで「気」を増やし、「気」を上のほうに動かしてめぐらせることで、元気を補います。

生薬

代表的な補気剤の「四君子湯」から利水剤の茯苓を抜いたものがベースです。

  • 人参・白朮・甘草・大棗(たいそう)・生姜(しょうきょう)…脾胃の気を補い、働きを高める

その上に以下の生薬が加わります。

  • 陳皮(ちんぴ)…気を巡らし、胃腸の機能を高める作用
  • 当帰(とうき)…血を補う作用
  • 黄耆(おうぎ)…気を補い、汗を止める作用
  • 柴胡(さいこ)・升麻(しょうま)…気を上に引き上げる作用

弱った胃腸の機能を高め、気を益し、気を巡らせて、体力を回復させるので、病後によく使われるのがわかる気がしますね。人参が入っているので、血圧の高い人は様子を見ながら使用するようにしましょう。温性の薬なので、陰虚から体のほてりがあるような方は不向きです。


2. 清暑益気湯とは?

「補中益気湯 (ほちゅうえっきとう)」の夏バージョンの漢方薬、とも言われていて、補中益気湯から、体を温める作用や発汗する作用の生薬を除いて、体の水分保持する生薬や体の熱を冷ます生薬が入っています。実は、清暑益気湯は、私の大好きな「麦味参」がベースの漢方薬です。

構成生薬

ベースの麦味参は3つの生薬が入っています。

  • 人参…エネルギー源の気を補う作用
  • 麦門冬…体液を補充して体に潤いを与える作用
  • 五味子…汗を止めて体液が体外に流出するのを防ぐ作用

その上に以下の生薬が加わります。

  • 白朮(びゃくじゅつ)甘草(かんぞう)…胃腸の機能を高める作用
  • 当帰(とうき)…血を補う作用
  • 黄耆(おうぎ)…気を補い、汗を止める作用
  • 黄柏(おうばく)…夏の過剰な湿と熱を取り除いて体を冷ます作用

エネルギーの源の気を補う働きを(補気)、血を補う働き(補血)、身体を冷ます働き、津液が外に出るのを防ぎ補充を行う働きのある漢方薬で、汗をかいて消耗した体にピッタリです。清熱作用はそんなに強くないので、長期使用もOK。もともと脾胃が弱く人が、暑湿にやられて、疲労感や食欲不振がでているような場合に向いています。

3. 使い分けのポイント

夏バテに使用する場合、「水」がポイントになってきます。脱水傾向がそれほどひどくない場合は、「補中益気湯」を使ってもオッケー。津液が不足し、体のほてりを感じるときは、体に潤いを与え、熱を冷ます力のある「清暑益気湯」のほうがよいでしょう。逆にエアコンによる冷えがある場合は、「清暑益気湯」はさらに体を冷やすので「補中益気湯」のほうが良いです。

  • 補中益気湯が向いている人の特徴
    • いつも疲れやすい
    • 食が細く、すぐお腹をこわす
    • 元気がなく、声にも力がない
  • 清暑益気湯が向いている人の特徴
    • 暑いとすぐにだるくなる
    • 冷たいものを摂りすぎて胃腸が弱っている
    • 汗をかきすぎて体力が落ちたと感じる
  • 季節で選ぶなら:
    春・秋・冬 → 補中益気湯
    夏 → 清暑益気湯
  • 主症状で選ぶなら:
    慢性的な虚弱・胃腸機能低下 → 補中益気湯
    急性の夏バテ、暑さによる不調 → 清暑益気湯

4.白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)

体の熱を冷まし、体内に水分を保持する働きをする漢方薬です。熱によって水分が取られ、口が乾いている症状に向きます。中医学では、熱中症を「中暑(ちゅうしょ)」といい、「暑さにあたった」という意味になります。

構成生薬

  • 石膏(せっこう)…熱を冷ます作用が強く、津液の消耗を防ぎ、口喝を回復させる作用
  • 知母(ちも)…石膏の働きを助け、熱を冷まし、体を潤す作用
  • 粳米(こうべい)・甘草…石膏、知母の熱を問う作用をやわらげ、胃の働きや津液を補う作用
  • 人参(にんじん)…エネルギーの源の気を補う作用

炎症や熱を取ることに注力した漢方ですので、冷え性の場合には向きません。体の熱をとる作用の強い石膏が入っているので、症状が落ち着いたら中止して、長期に使用しないようにしましょう。

まとめ

同僚の息子ちゃんには、まず清暑益気湯を服用してもらうことになりましたが、エアコンの冷えもあるようなので、補中益気湯も持ってもらうことにしました。また、猛暑で熱中症も起こしやすいので、白虎化人参湯はいざという時のためにみなさまにおすすめです。自分の体質や症状に合った漢方薬で夏を元気に乗り切ってくださいね~(^^)/

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