不眠とさようなら

先日、少し前から急に寝つきが悪くなったという患者さんが来局されました。それ以前も時々眠れないときがあったが、2日以上は続かなかった。今は3~4日眠れないことがあり、仕事の日だと結構つらいとのこと。あ~わかります。私もこの患者さんと同じような歳の時にさんざん不眠で悩みました(>_<)今回は、不眠について中医学の視点で考えてみたいと思います。

不眠症

「眠ろうとしてもどうしても眠れない」ということはだれでもありますが、通常は数日から数週のうちに改善します。この不眠が1ヶ月以上にわたって続き、日中にさまざまな不調が出現する状態を「不眠症」と言います。不眠症は4つのタイプに分けられ、寝つきの悪い「入眠障害」、眠りが浅く途中で何度も目が覚める「中途覚醒」、早朝に目が覚めてしまう「早朝覚醒」、ある程度眠ってもぐっすり眠れたという感覚が得られない「熟眠障害」があります。

中医学から見た不眠症

中医学において不眠症は、主に3つの臓腑(心・肝・脾)が関係していると考えられています。何らかの原因でこれらの臓腑の働きがうまくいかないと、身体のバランスが乱れ、不眠の症状が現れます。
また、不眠は腎とも関連が強く、腎の機能低下が、心に影響を与えて不眠が起こります。

  • 心(しん)

中医学において、心は栄養の豊富な血液を全身に送り出す働きと、精神活動=神(しん)を安定させるという働きを持つとされています。心の働きが落ちて、全身に栄養を運ぶ機能が落ちると、神も栄養不足になり精神を安定させる働きが落ちてくることによって不眠が起こります。

  • 肝(かん)

肝は血の貯蔵する働きがあり、心とともに血と関係の深い臓器です。また全身の気血のバランスを整える働きがあります。肝の機能が低下すると気血の流れが悪くなるため、精神的、身体的に不調が生じ、心に影響を与え不眠が起こります。

  • 脾(ひ)

脾は、主に食事によって摂取した飲食物を消化吸収する働きを行っています。吸収された飲食物は血の原料となるため、脾の状態が悪くなると、血が不足した状態=血虚が起こり、結果、心や肝の機能が落ちて、不眠につながります。また暴飲暴食やストレスなどで正常に消化吸収がされないと、胃に食物が留まる食滞(しょくたい)と呼ばれる状態が起こります。この状態では、胃がムカムカしたり、ゲップや吐き気のため、睡眠の質に大きく影響を及ぼします。

  • 腎(じん)

腎は、体の水分の調節を行っている臓腑です。腎の機能が低下して、水分のバランスをうまく取れなくなると腎陰虚(じんいんきょ)と呼ばれる身体の潤い不足が起こります。この結果、心の潤いが不足して熱が発生し、「心腎不交(しんじんふこう)」とよばれる不眠の症状が現れやすくなります。手の平や足の裏が熱っぽい、イライラする、寝汗、のどが渇く、忘れっぽい、耳鳴り、腰痛などの症状が出ることもあり、寝ついても途中で起きてしまうことが多いです。また、腎の働きが低下することによって、夜間のトイレが近くなるという症状が現れやすくなり、不眠の原因の一つとなります。

おススメ漢方薬

  • 心と肝

不眠の代表的な漢方薬「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」(ツムラ103)は、肝鬱やストレスによっておこる不眠に効果があります。主薬の酸棗仁は、酸味があり、肝を補う効果があります。また清熱作用があるので、のぼせを伴うような場合も使いやすいです。

  • 心と脾

気血を同時に補い、脾気虚と心血虚を補う漢方薬として、「帰脾湯(きひとう)」(ツムラ68)があります。脾を強めて心の血を増加させることによって、安神作用があり、不眠に効果があります。

  • 心と腎

心腎不交に良い漢方薬として、「天王補心丹(てんのうほしんたん)」があります。中国の処方である世医得効方に基づいて作られたもので、陰を補い、熱を冷ます作用があります。また、養心安神作用のある生薬が配合されていて、安眠作用が強いです。滋養作用のある生薬が脾胃に負担になることがあるので、胃もたれが起こる場合は注意が必要です。ツムラには同じものがないので、六味丸(87)+桂枝加竜骨牡蛎湯(26)を代わりに使っても良いです。

不眠改善のための食生活養生

・夕方以降にカフェイン(コーヒーや紅茶など)の摂取を控えましょう。

・就寝1時間半前にお風呂に入って身体を温めましょう。寝るころに体温が下がって入眠しやすくなります。

・寝る2時間前からはスマホやパソコンは控えましょう。

・夕食は寝る2時間前には済ませましょう。遅くなる時は消化のいいものを。

・お酒を飲むと寝付きやすくなりますが、睡眠の質が低下します。飲む量はほどほどに。

・散歩や軽いストレッチなどで、適度に身体を動かしてストレス解消を。寝る前の激しい運動は逆効果です。

まずは生活養生をきちんとすることが、不眠を改善する第一歩。そして、腎虚による不眠にならないためにも、若いころから補腎することが大事ですね。いつも言っていますが、食べ物、睡眠、過労やストレスを避けるなど、いつも腎を意識した生活を心がけましょう。最近なんだか眠れないな~という方は、お心当たりがあるところから改善してみてくださいね~(^^)/

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